和裁で子供物とは、身長120㎝ぐらいまで着られる着物(仕立て方)のことをいいます。
昭和の時代、子供物用の反物は、身長に応じて裁断してもらって購入することが出来ましたが、現在では大人用のゆかた地(一反)から比較的小さな柄を選んで仕立てています。
インターネット通販でも1~2才用の反物は柄も豊富に販売されていますが、それ以上の年齢のものは、好みもあって、なかなか難しいようです。
身長120㎝で約8m必要ですので、一反の2/3を使うことになります。
写真は、男物絞りゆかた生地(部分)
奈良で和服のお仕立て・お直しなら森和裁工房(奈良県磯城郡田原本町)
布に張りをもたせ「縫う」「くける」の作業を補助してくれる和裁の道具です。
和裁に限らず手縫いには必要な道具で、小学校で購入する裁縫箱にも入っていたのですが、意識の薄れからか、購入代金等の理由からか、何時の間にか裁縫箱から消えてしまいました。残念なことです。
くけ台は、座布団の下に敷いて使う本格的なものと、テーブルに取り付けて使う机上くけ台があります。
布をはさむ蛙みたいな形をした金属製のものを掛け針といいます。
この名前って何?と思いませんか。針ってどこにもありませんから。
実は金属製の便利なものが出来る以前は、写真のように、くけ台には輪にした紐を付けて置き、布にさした針に引っ掛けて使っていたからです。
手縫いに使う針の正式な総称は和針(わばり)といいます。これは明治時代になって定着した西洋文化のものと区別するためです。
因みに和裁もそれまで「きもの」「お裁縫」と言っていたのが「和服裁縫」となり、縮めて「和裁」となっています。
写真中央の包紙が昔から日本で使われてきた針で、私たち和裁士も使っているものです。
一~四の数字で太さや長さを表わしています。
近年は一般の方にわかりやすいように用途を表示したパッケージ(写真右端)で販売されるようになりました。
写真の左端は洋針で「メリケン針」と言います。
私の明治生まれの祖母は小麦粉のことを「メリケン粉」と言っていたのを記憶しています。
洋針が現在も「メリケン針」と表示して販売されているのもおもしろいですね。
運針というと針を持っている右手(利き手)を動かしているようなイメージがあると思いますが、実は左手が動いています。
まず、右手の中指に指皮(指貫)をはめ、針のメド(穴の空いた方)とほぼ直角になるように当てます。
右手はこの状態をキープしながら左手を大きく上下に動かします。
布が大きく動くので、それに従って右手の親指と人差し指が代わる代わる動くことになります。
つまり、主導権は左手にある訳です。
針を持つ右手が優先され、左手がほとんど動いていない運針では
右手に力が入り、針が折れたり、親指や手首を痛めることもあります。
パッチワークのパーツなど小さなものを縫う時も、意識して左手を動
かすようにすれば、疲れずきれいに縫えますよ。
屋外には、さまざまなお店がのぼり旗をいっぱい立てています。
のぼり旗は、古代より祭礼や軍容(ぐんよう)に用いられて来たのですが、布が風にはためく清々しさと、少し離れた所からでも合図を送れることから、広告や啓発用として現在も広く活用されています。
でも、何の違和感もなくのぼり旗を受け入れている私達って、おもしろいと思いませんか。
のぼり旗も着物と同様に、一幅の布の文化が現在まで継承され、古代から続く和の文化が私たちの日常生活に溶け込んだ一例だと言えます。
着物の布幅のお話は終わります。